それから約5分後、集計結果が出たのか、御姉様が何やら落ち着かない様子でマイクの前に現れた。

「えー……結果を発表します……大原雪江、98問正解……」

という御姉様の声に、会場からわーっ!という喝采が起こった。
「さすが大原さん」
「これは勝ちね」
とか言う声も聞こえた。
そして、御姉様は続きを発表する。

「……百瀬すずな……正解数……303」

会場内は水を打ったように静かになった。
そして、次の瞬間、ガッツポーズをする提督さんと、少尉さん、後ろでキャーという5才組の甲高い笑い声が聞こえた。

「は?嘘でしょ?」

大原さんは一人言のように言った。
嘘ではない。
これでも、今日は少し調子が悪いくらいだ。
と、私はほくそ笑んだ。
だが、結果に納得が行かないのは、大原さんだけじゃなかったようで。
御姉様はとても言いにくそうに私に向かって言った。

「ええと、この結果に本部が異議を申し立てているので、悪いが……すずな嬢、不正がないか、もう一度みんなの前で問題を解いてもらいたいんだが……?」

「はぁ!?」

と言ったのは提督さん。
隣に座る少尉さんが慌てて止めるも、怒りまくった提督さんが止まる筈はなかった。

「ふざけるなよ。誰だ?異議など唱えたやつは!名乗り出ろ!成敗してくれる!」

成敗!?穏やかじゃないよ!?
ああっ、ちょっと、軍刀に手をかけないでぇ!!
提督さんの怒りの度合いはMAXに近い。
本部の皆さんは、誰かの後ろに隠れようと必死で押し合っている。
これじゃあ、死人がでるよー!

「はいっ!!問題解きまーす!問題クダサーイ!」

私は大声で手を上げた。
だって死人は出せないからね、さすがに。
その声に提督さんは振り返り、黙ったまま顔で語った。
「いいのか?」と。
なので、私も大きくゆっくり頷いた。

「あー、それでは、皆落ち着け、とりあえず座れ!!」

本部の人も提督さんも大人しく席に着いた。

「では、改めてすずな嬢、今から私が問題を言う。それを答えてくれ」

「はい」

「第一問、756+927は?」

「1683」

「……………正解」

「第二問、1745-839は?」

「906」

どちらも間髪入れずに答えた。
それから問題は8問ほど続き、最後に御姉様は言った。

「この勝負、百瀬すずなの勝利とする」