舞台袖に回ると、そこには既に子供達がスタンバっている。
小さい子から順番なので、5才組は三番目。
歌を披露する予定の3人は、緊張しているのか舞台袖でカチンコチンに固まっていた。

「おはよー!皆、緊張してる??」

からかい半分で声をかけると、りょうくんが泣きそうな顔で抱きついてくる。

「おねえさん!どうしよう、僕、絶対間違えるよー」

「そんなことないよ!練習通りにやればいいの。ね、本番は練習のように。練習は本番のように……よ!」

「練習通り??」

うんっ、と頷くとサキちゃんとひろとくんも走り寄ってきた。
2人も同じく固い表情をしている。
私は3人の手を開かせ、その掌に定番の『人』という文字を書く。

「これはね、おまじない。今おねえさんは、人っていう文字を書きました。この書いた文字を食べる真似をするとね……」

と、掌の物を食べる振りをする。

「人、つまりお客さんを食べちゃうってことになって、緊張しなくなるの」

「え!緊張しないの??」

と、ひろとくんが言い、

「すごい!サキ、いっぱい食べておくね!!」

とサキちゃんが目を丸くした。

「うんうん、たーんとお食べ?」

すごいすごいと掌を食べる子供達を見て、私は目を細めた。
本当に素直で可愛いな。
表情がくるくる変わって、見てるのも楽しいし、何より生命力の塊だと思う。
子供達は宝だね。

「お見事」

振り返ると提督さんが、その様子を弾けるような笑顔で見ていた。

「ふふっ、子供達は素直ですから」

「ああ、そうだな……これからだんだんと子供の数も減っていくが……それでもなんとか繋いでいかないといけない。彼らの未来の為にも」

「そうですね」

この終息していく世界でも、生きて行かなくてはいけない。
提督さんも、少尉さんも、この世界のみんなは知っている。
そんなに遠くない未来、人類が滅ぶということを。
だけど、それに抗えることも知っている。
目の前の生命力溢れる小さな命、それがきっと答えなんだ。