「今から何をするか、わかってるのか?」

 お兄ちゃんはそう言い、

「うん、わかってる」

 と私は応えた。

「やめてもいいんだぞ?」

 と言われ、私はお兄ちゃんの顔を見た。そして、

「やめてどうするの?」

 と聞いたら、お兄ちゃんはフッと笑った。

「東京に帰っても、この先どう生きればいいのか、わからないから……」

「だよな。もう聞かないよ」

 二人して、ハアーとため息をついた。

「じゃあ、そろそろ……」

 と言ってお兄ちゃんは立ち上がったのだけど、私はある事に気付いた。

「お兄ちゃん、ヒトってさ、水に浮くよね?」

「ああ、最初はね。その後は沈むはずだけど」

 私は水面に浮かぶ二人の姿を想像し、それは嫌だなと思った。

「プカプカ浮いたらかっこ悪いから、何か重しをつけない? 体が沈むように」

「ああ、確かに。ちょっと待ってて?」

 お兄ちゃんはどこかへ行き、しばらくすると、手に白いビニールの紐を2本持って戻って来た。