「ごめん。俺の考えが甘かった」

「ううん、お兄ちゃんのせいじゃないよ。いつかはこんな事になるって、思ってた」

「俺もだ。三田さんに黙っていてもらったとしても、父さんや加代子さんに知られるのは、時間の問題だと思う。それに三田さんだって家族みたいなもんだから、どんな顔で接すればいいのか……」

「そうだね。これからどうするの?」

「取りあえずはこの家を出ようと思う」

「うん。それしかないよね。私も一緒だからね? 一人にしないでね?」

「大丈夫だよ。俺達はどこまでも一緒さ。決して離れない」

 俺と幸子は、本当はテーマパークへ行く時に着るはずだったペアの服を着た。俺はブルージーンズに、キャラクタがプリントされた黒地のTシャツ。幸子はデニムのショートパンツに、白地のプリントTシャツを着た。それと、念のためにお揃いの白いパーカーを持った。

 そして、

 ”ごめんなさい。真一・幸子”

 と書いたメモを、俺の部屋のテーブルに置いた。本当はもっと何かを書くべきかもしれないが、何をどう書けばいいのかわからなかったのだ。

 それと、これはかなり迷ったのだが、俺と幸子のスマホを、そのメモの横に置いた。父さん達との連絡を完全に断つために。

「じゃあ、行こうか?」

「うん」

 俺達は、爺や達に見つからないように注意して、こっそりと抜け出した。住み慣れた、村山の家を。