鬼畜な兄と従順な妹

 私がソファに座ると、お兄ちゃんも隣に座った。少し間を空けて。

「私、ここに入ったの初めてだなあ」

 家政婦の三田さんがお掃除してくれるから、この部屋も綺麗なのは私の部屋と同じだけど、壁に、たぶんだけどサッカー選手の大きなポスターが飾ってあったりして、やっぱり男の子の部屋って感じがする。と言っても、男の子の部屋に入ったのは生まれて初めてなんだけど。

「ここが解らないの」

 私はテーブルの上に数学の教科書を置いて開き、昨日学校で習った問題のひとつを適当に指差して言ってみた。お兄ちゃんはすごく優秀だから、どんな問題でも大丈夫だと思って。

 すると、やっぱりお兄ちゃんは、難なくその問題の解き方を私に教えてくれた。

「さすが、お兄ちゃん。頭いい!」

「おまえさ、本当は……」

「あ、いけない!」

 お兄ちゃんに嘘がバレたっぽくて、私は咄嗟にお兄ちゃんが言うのを遮った。想定内ではあるけども。

「どうした?」

「私、"お兄ちゃん"って言っちゃった。ダメなのよね? ”真一様”って言わないと。お仕置きよね? やだなあ」

 私は恥ずかしくて、早口でそう言うと、顔をお兄ちゃんの顔の前に突き出し、そっと目を閉じた。それはもちろん、お兄ちゃんにキスしてほしいから。