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 ある日の昼休み。教室に戻ろうと廊下を歩いていたら、「村山君ってさ……」と言う女子の声を耳にして、私は思わず立ち止まった。

 階段の下に女子が3、4人いて、校内の噂話に花を咲かせているらしい。普通は素通りするのだけど、お兄ちゃんの話なら聞いてみたいと思い、私は廊下の角に隠れ、聞き耳を立てた。

「最近、喋り方が変わったんだってね」

「そうそう。"俺"って言うんだって。なんかさ、優等生ってキャラが変わっちゃったよね?」

「そうだけどさ、ますますカッコイイと思わない?」

「うんうん。そう言えばさ、嶋田さんと別れたってホントなのかな?」

 え、うそ。麗子さんと別れたの?

「ホントらしいよ。村山君も嫌気がさしたんだよ。あんな女」

「だよね。村山君と付き合いながら、神徳君に色目を使ったりしてさ。二大プリンス相手に二股かけようなんてさ、とんでもないよ、あの女」

「結局は両方から振られてさ、ざまあみろよね?」

「神徳君と言えばさ、村山君の妹と付き合ってるんだってね?」

 え、私? 直哉君とは一緒に帰るだけで、付き合ってないのに……

「うっそー。それはショックだわ」

「あの子ってさ、愛人の娘なんでしょ? 大人しそうな顔してるけど、男に媚び売るの得意なんだろうね。母親譲りで」

 私は聞いていられなくなり、その場を去った。

 気分は良くなかったけど、おかげで私が陰湿な虐めを受ける理由がわかったし、お兄ちゃんと直哉君が学園の二大プリンスだという事。そして、お兄ちゃんと麗子さんが別れた事を知ったのは、私の中では大きな収穫だったと思う。