「な、何を言ってるの? 私は何も企んでなんて……」

「嘘だ。あなたは幸子に何かしようと企んでるはずだ。何をしようとしてるんだ?」

 俺は麗子さんの肩を揺すった。この女は、絶対に何かを企んでいる。俺はそう確信していた。

「しようとしてるんじゃないわ」

「え?」

「もうしたんだもの。今頃は、2年の不良達に……」

 2年の不良達に、幸子が乱暴されてるってか!? くそっ!

「車を止めろ!」

 俺は嶋田家の運転手に向かって怒鳴った。運転手はハッと肩を揺らしたが、車は止まらない。

「早く止めて学校へ戻れ! お嬢さんが犯罪者になってもいいのか!?」

 それを言うと、やっと車は脇に停まり、Uターンを始めた。

「もう間に合わないわよ……」

「うるさい! おまえはそいつらに、中止するように伝えろ。早く!」

「わかったから、怒鳴らないでよ……」

 麗子はLINEで中止のメッセージを不良の誰かに送ったようだが、既読にはならなかった。

「お取込み中みたいだわ」

 俺はその言い方に、ムカッとした。

「もし間に合わなかったら、あんたを破滅させる」

「破滅だなんて、大げさね」

「大げさなもんか。これは立派な犯罪だ。俺はあんたを警察に突き出す」

「そ、そんな……」

 麗子はようやく事の重大さに気付いたようで、慌ててスマホで電話を掛けたりしていたが、繋がる事はなかった。

 頼む。間に合ってくれ!

「あんな女、どうなってもいいじゃない。変なの!」

「黙れ!」

 ”変なの”かあ。確かに変かもしれない、俺。