それはLINEだった。開くと、”学校で会おうね”という、神徳からのメッセージだった。

 スクロールさせると、幸子と神徳のやり取りが延々と続いていた。幸子からはローマとかの画像を送り、神徳からはスペインかどこかの画像が送られて来たりしていた。

 更にスクロールさせて行くと、”体操着は見つかりました”とか、”教科書ありがとう”とか、意味不明なやり取りがあった。俺はそれを幸子の顔の前にかざし、

「これは何だ?」

 と聞いた。

「べ、別に……」

「別にって事はないだろ? どういう経緯か言え」

「体操着は……どこかに行っちゃって、でも見つかったの」

「教科書は?」

「それは、その……破れちゃったから、直哉君に見せてもらったの」

 ”直哉君”だと!?

 それも腹が立ったが、体操着がなくなっただとか、教科書が破れたって、どういう事だ?

 あ、そうか。そういう事か。

「おまえ、学校で虐められてるのか?」

「そんな事は……」

「いいや、虐められてるね。正直に言えよ」

「はい、実は……でも、大丈夫です」

「神徳が庇ってくれるからか?」

「う、うん」

 俺は猛烈に腹が立ち、幸子をカーペットの床に押し倒し、その上に伸し掛かった。

「俺に隠し事しやがって……」

「ごめんなさい。お兄ちゃんに心配かけたくなくて、言えなかったの。直哉君も、ん……」

 俺は幸子の頭に手をやり、素早く幸子の口を俺ので塞いだ。幸子を黙らせたくて。幸子に”直哉君”と言わせないように。