「俺のことが好き、、、?」

え、、、、え?

「え。ちょ、ちょっと待って。

俺、別れ話されに来たんじゃないの?

今、俺のこと好きだって言ったのか?」

自分に都合がいいように耳が働いたんじゃないかって思うほど、信じられない。

「言ったよ。

聞こえなかった?」

そう言って首を傾げるリリを見て、やっと実感が沸いてきた。

俺は振られたんじゃない?

安心して、気が抜けるけど、言わなきゃならないこともある。

「あのな、俺もリリのこと好きだよ。

ずっと前から、変わらずに愛してる。

裏切ったわけじゃないんだよ。

俺の説明を聞いてくれないか?」

フォルティスの口から、まだ私のことを好きでいてくれたって伝えてもらえて、心底安心した。

それに、フォルティスが乗り換えようとしたわけじゃないって、、、

「うん。聞きたい。

フォルティスの口から。教えてほしい。」

ふんわりと、涙を浮かべながら微笑むリリの涙を拭う。

いつものように、手を引いて自分の隣にぴったりと座らせると、手を握った。

「あの日、リリは俺がハイネ王女をエスコートしてるのを、見たんだよな?

俺はその日、報告で城内に入った帰りに、ハイネ王女に見つかって、お茶に誘われたんだよ。

それは命令じゃなかったし、リリに会いに行くために早く帰ろうとしていたから、きっぱり断ったんだ。

それなのに、家に王宮からの使者が来て。

王妃にハイネ王女が頼んだんだ。

俺が夜会で、エスコートするようにって。

リリに見せようとしたんだよ。あいつは。

俺は、まんまとその罠にはまってしまったんだ。」

私の目をじっと見て、話してくれるフォルティスは嘘なんかついてない。

少し心配そうな顔をしたリリに、慌ててフォローする。

「大丈夫、昨日ハイネ王女に会って、断ってきたから。

リリと結婚するつもりだから、諦めてほしいって。

それに、さっきリリのお父様が、守ってくださると約束してくれた。

騎士の俺では、及ばないところも。

だからさ、もう心配しないで。

何も言わずにあんなことしないから。

リリに相談するよ。傷つけたくないし。

もし、信じてくれるんだったら、、、

結婚しよう。

リリ、俺と結婚してください。」

口の中がからからに乾燥した。

緊張して、指輪を差し出す手も震えている。

俺たちの国では、指輪は2人の人生を永遠に、結びつけるものとされている。

だから、この指輪を受けとるということは、この先ずっと俺と生きていくっていうことだ。

リリが何も動かないから、怖い。

恐る恐る顔を上げてみると、涙をぼろぼろと流していた。

何度もこすって涙を止めようとしていた。

「リリ?泣くな。どうした?」

「ち、、うの。

いやなんじゃ、なくて、だだ、うれし、、ぃだけぇー。」

無理して話そうとするから、何となくしかわからない。

「ゆっくりでいいよ。

嫌なんじゃなくて、から何て言ったの?」一粒一粒をハンカチで拭き取りながら、抱き締める。

すると、驚くような力で抱き締め返された。

「嬉しいのっ!もう、わ、たしは、捨てられちゃうと思ったからーーー。ぐすっ。」

すがりつくように、俺の胸にぐりぐりと頭を押し付けてくるリリを見て、不安にさせていたことを実感した。

不安のなか、告白するのはどんなに勇気がいったことだろう。

俺は、気持ちが変わるわけがないと言えるけど、リリは分からなくて不安だったはずだ。

頭をそっと撫で続けると、落ち着いてきたのか顔を上げた。

潤んだ目に見上げられ、赤くなったまぶたにそっと口づけすると真っ赤になった。

俺は、自分のなかで、ぷつっという理性が焼き切れた音を聞いたような気がした。

リリのほっぺたに手を当てて、優しく口づけを落とした。

びっくりして止まるリリがかわいくて、許可もとらずにもう一度する。

少し長めにした後、覗き込むと、さっき以上に真っ赤な顔でまばたきを繰り返していた。

「嫌だった?」

と、意地悪そうに聞くと、目を反らしながら

「嫌じゃ、なかった。」

と答える。

心臓がばくばくと音をたて、自分でも止められない。

もう一度最後に短く、ちゅ、と音をたててすると、リリを腕の中に入れた。

すっぽりと入るリリは、驚くほど小さい。

俺は、この人を、一生かけて守り抜きたい。

そう心に誓った。





初めて分かったことがある。

それは、フォルティスがキス魔だということ。

初めて口づけされた日から、フォルティスは毎日するようになった。

初めてされた日も、放心状態なのがかわいかっただとか言って、3回もされた。

そこから、ずっと抱き締めたまま離さないフォルティスを説得して、みんなにお礼を言いに行くまで、大変だった。

お父様はすごく喜んでいらっしゃって、早速婚約者として扱い、次の日には私の部屋の近くに客間まで用意して、迎えていた。

カイやマリンも大喜びしてくれて、マリンはリリアンヌ様ならば、大丈夫だと思っていましたといいながら、大号泣していた。

フォルティスがしぶしぶカイにお礼を言っていたのも、面白かった。

フォルティスの過保護度が、なぜか上がり、今日のドレス決めも大変だった。

セクシーにいきたいと言うマリンに、反対して揉めていたけれど、結局フォルティスはマリンに負けて、私は今、胸元から上が、レースの深紅のドレスを着ている。

さっきから、隣のフォルティスからは不機嫌オーラが出ていて、気まずい。

なんでこんなに見せるんだ、とかレースってまずエロいんだよとか、呟いているのが分かった。