鼻にツンとくる消毒液の臭いに心がざわつく。



診察室から顔を覗かせた看護師さんの良く通る声が待合室に響いて、ドキッと心臓が跳ねた。



「さいとうさーん、さいとうゆうこさーん、診察室1へどうぞ。」



呼ばれたのが自分じゃないことにほっと胸を撫で下ろす。



結愛と共にやって来たのは、学校から近い町の病院だ。



颯くんの勤務先は本当は大学病院なのだが、週2回ここの病院でも働いている。



“外勤”って言うんだって、颯くんが教えてくれた。



「今日颯くん先生こっちの病院の日で良かったね!」



私の心中を知ってか知らずかニコニコと結愛がそんな言葉を投げかけてくる。



なんにも良くない。



体調が悪いことがバレた時点で、私にとっては最悪だ。



もう、お分かりいただけただろうか。



私、立川梨央は、病院嫌いなのだ。