「落ち込んでたって逃げらんないんだから、諦めて言う通りにするのが元気になる一番の近道だと思うけど?痛いのちょっとだけだから。頑張れない?」



段々と颯くんの言葉が優しくなる。



優しくなる時に限って何かを頑張らないといけない時なのだ。



「とりあえず聴診させて。大丈夫、これは痛くないから。」



そんなこと知ってるし、痛くなければいいというものでもない。



「はぁ、ほんと、やだ。」



「はいはい、梨央が診察苦手なのは分かってるよ。だから俺が主治医やってるんでしょ。」



そう言いつつ、聴診器を取り出す颯くん。



「俺のこと怖い?」



耳に聴診器をセットしながらそんなことを聞いてくる。



「…怖く、ない。」



「じゃあ、大丈夫。俺に任せて目瞑って深呼吸してな。」