その男の人は
いつも買うものが決まっている。
少しのお惣菜と2リットルのお茶
きっと一人暮らしなのかな?
それと黄色いパッケージの板チョコ。
初めてその男の人を見た時、
かっこいいなと思ったのと、
板チョコ食べるのなんか可愛い。
と思った。
その男の人の順番になった。
うん、いつも通りの板チョコ。
可愛い。
食べてる顔を想像するだけで
にやけちゃう。
クールそうな顔してるのにきっと
優しい顔で食べるんだ。
いつも話しかけてみたいと思ってしまう。
だけど後ろは長蛇の列。
そんな話をしてる余裕なんてない。
その列は
私を残念な気持ちにさせる反面
話せない理由ができてホッとしてしまう。
どっちにしても自分勝手かも。
お釣りを渡す手は少し震える。
緊張して。
ちょっとだけ、触れてみたいような。
でも、触れたらきっと驚かれるかな。
いつも通り、レシートの上にお金を置いて、
その男の人の手の上にそっとおく。
なるべく触れないように…。
