だけど、彼の手が離れていった私の右手は、寂しい。もっと彼の体温と繋がっていたかったから。


「ただ、見惚れてたんだ。アンコの寝顔がオレンジになってたから」


見惚れてた、だなんて恥ずかしいことをサラッと言ってしまう彼に驚いた。


保健室の窓に差し込んだ夕陽に照らされて、私達は2人ともオレンジ色だ。


「ごめん、結構眠ってたみたい。北原くんずっと待っててくれたの?」


「保健室の先生が会議にいっちゃったから。アンコを1人で寝かせたまま放っておけなくて」


「そっか、ありがとう、ごめんね」


「いや、俺がそうしたかったから」


どうして今日はこんなに優しいのかな。


私はさっき教室で、あんな嫌な言い方をして逃げてしまったというのに。