どうしよ、でもここは平常心で。


なんとか心を落ち着かせて、自然に彼にシャーペンを返そうとした。


「は、はい。きたはらく」
「ありがとう月島さん」


だけど差し出したそれを素早く受け取ったのは、彼ではなく安藤さんだった。


「ごめんなさいね、北原くんたら左手しか使えないから」


まるで、彼の代わりに謝るみたいな彼女の態度には正直辟易したけれど、やっぱりなんにも言えない。


「ねえ、月島さん、お願いがあるんだけど」


「え、お願いって?」


「月島さんの席と私の席を代わって欲しいんだけど。だってこれから北原くんのお世話をするとき席が近い方がなにかと便利でしょ」


堂々とマウントをとるように彼女は腕を前に組み、威圧感たっぷりに見下ろしてきた。