「ううん、まだみたい」


「アンコのうちでは、飼えないんだろ?」


「うん、うちのマンションはペット禁止だから。今、特別に許可もらってるんだよね。早く飼ってくれる人を見つけないと」


「そっか、困ったな。成長すれば引き取り手も減ってくるだろうし」


「うん、そうだよね」


仔猫の今後のことが心配で、フゥッてため息をついた。


そんな私を見て、彼は少し考えるような仕草をする。


「まあ、どうしても見つからなかったらうちで飼ってやるよ。うちはペットオッケーのマンションだから」


「い、いいの?」


「ああ、だってせっかく2人で助けてやったんだから最後まで面倒みないとな」


その嬉しい提案を聞いてパッと顔を輝かせる。


「う、うん、ありがとう。そしたら私ずっと北原くんちにかよって猫ちゃんのお世話するから」


「ほんと?」


「うん」


「じゃあ、怪我が治った後もアンコとの縁は切れないね」


「え?」


彼は何気なく言ったのかもしれないけど、ちょっと胸に刺さった。


チクンと針みたいに心に刺さった。


裏を返せば、それは怪我が治ったらもう私と彼は無関係になるって言われたような気がした。


それじゃあもしも、仔猫の引き取り先がほかに見つかれば?


私と彼は元の関係に戻るんだろうか。お互いに必要以上に言葉を交わさないただのクラスメイトに。


そこまで考えて言ったわけじゃないってわかっているのに、その可能性を思っただけで寂しくなってしまった。