「すぐ近くなんだし、送ってくれなくても大丈夫だよ」


「いいから、俺、コンビニでアイス買いに行きたいから。ついでにアンコんちの傍まで行くよ」


うそばっかり、甘いもの嫌いなくせに。


なんだかんだと優しい嘘をついてくれる彼と、夜道を一緒に歩いた。


5月の夜は少し蒸し暑くて、夏の訪れを感じる。


だけど、また彼は黙り込んでしまいスタスタと私の少し前を歩く。


そして、振り返り無言で私が追いつくのを待っている。


だんだんとこの沈黙にも慣れてきていた。


視線が合うと彼は少しだけ笑ってくれるので、ますます安心する。


彼の端正な横顔は月明かりに照らされて、ドキドキするほど繊細で清らかに見えた。


少しづつ彼を知っていくのが、嬉しいと感じたり、だけどあんまり胸が高鳴るのが怖いと感じるのはどうしてなんだろう。