気がつけば、彼の右腕を握っていた手に力をこめていた。
無意識にこんな風に願っていた。
あなたをもっと知りたいよ、北原くんの気持ちが。
すると頭の中に一瞬だけそれが、見えたような気がした。
幻みたいにほんの少し垣間見えたその想いは。
何もかもすべて、自分のせいだと苦しんでいる彼の辛そうな顔が一瞬だけ、浮かんですぐに消えた。
悲しみと絶望と、そして孤独。
それは確かに彼の中にあるもの?
今のはなんだろう。錯覚かただの気のせいか
。
「あ。ごめん。こんな話つまらないよな。やめようこんな話。そうだぬいぐるみ、いつでもいいから修理しておいてくれる?」
私を見て、困ったように作り笑いをする彼。
だけど、せっかくそこまで話してくれた彼に何か言ってあげたかった。
迷惑かもしれない、余計なお世話かもしれない。
だけど、私は伝えたかった。
「あ、あの私が言うのもなんだけど北原くんて冷たく見えて、実はそうじゃないっていうか。
私でさえ、しばらく接したらわかったんだから、北原くんのお母さんがわからないわけないし」



