消えてしまう君に捧げる



「じゃあさ、出ようよ、外」


「え?でも…」


「学校の人達が怖いだけだろ?遊びに行くくらい平気でしょ」


ずっと思ってた、何か僕が彼女にしてあげられることはないか、って。


これだ。僕が唯一彼女にしてあげられること。
一緒に外へ出かけるんだ。


「話してみようよ、外出許可のこと」


「…うんっ」


許可は、あっさり貰えた。


「土曜日に行こう、行先は君が行きたい所」


「私、スカイツリーに登りたい!」




そして、当日。


「いい?もし少しでもおかしいと気付いたら、すぐに救急車を呼んで」


「はい、わかってます」


小春を担当している看護師に、タクシーに乗るギリギリまでそう忠告された。


「そういえば、小春のお母さん、外出のこと何か言ってたの?」


「喜んでたよ、あと今度智弘くんに会いたいって言ってた。お礼したいって」


「僕、お礼してもらうほどのことしてないけど」


「お母さん、嬉しいんだと思う、私が外に出ること。でね、ほら、この服と靴、今日のために買ってきてくれたんだ」


見てみてー、とワンピースの裾をぴらぴらと泳がせて見せてきた。そんなことされると目のやり場に困る。


シンプルな薄ピンク色のワンピースに、少しヒールがあるリボンのついた可愛らしい靴。


髪の毛もいつもは下ろしているのに、珍しくカールされていて、おまけに爪の色もピンクだ。


「楽しみだったの?今日」


「もちろん。初めてなの、スカイツリー。すごく高いんだよね、想像出来ないなぁ」


「はしゃぎすぎて転んだりするなよ」


「ははっ、もう、子供じゃないんだからそんなことにはなりませんよー」


どうだか。君は精神年齢が小学生だからな。


あぁ、楽しいな。


「…前から思ってたけど智弘くん、笑ったほうがいいよ、イケメン」


あ、今僕、また笑ってたのか。


「…そんなこと思ってないくせに」


「本当だって!そうやってこれからも笑ってよ」