調子が狂う。僕だけこんな恥ずかしい思いをするのは不公平な気がする。
「これからもそう呼んでね、私も智弘くんって呼ぶから」
「…好きにすればいいよ」
「うん、好きにする」
そういえば、僕はまだ1度も彼女の悲しんでいる顔を見た事がない。もちろん、見たいわけじゃない。
だけど本当に、見たことがない。
大概微笑んでいるか、真剣にパソコンとにらめっこをしているか、変顔をしているか、だから。
弱音を一切吐かない。病気の話をしているときも、明るくにこにこしている。
実際は何を思っているんだろう。彼女は強く見せていて弱い人のはずなのに。
「私ね、実はすっごく元気なんだ」
「…まぁ元気がないようには見えないけど」
「本当は外出だって問題ないんだよ。身体が薄れ始めても、すぐに歩けなくなる訳じゃない。入院だってギリギリまでしなくてもいいの」
確かにそうだ。父さんも薄れ始めてから入院していた。
じゃあ、どうして…
「怖いんだ、学校の人たちが。実は最初、親友だけに病気のこと言ったの。そしたらその子、みんなにバラしてさ。結局学校中に広まって、移る〜とか根拠の無い理由並べて、皆が私を避けるようになった」
「そうだったんだ」
「…入院してるのは、学校に行きたくないから。だから入院してるの。でも辛いことばっかじゃないよ、こうして智弘くんとも友達になれたしね」
「…」
「……だけど…せめて死ぬ前に、もう一度だけ…外に出たいなぁ…」
彼女はまだ、笑っていた。
涙を流しながら、笑っていた。
