あの日、夫が突然、あんなことを言い出したのは、本当に偶然だったんだろうか?それともさすがに、私の様子がおかしいことに気付いたからの行動だったんだろうか?


聞いてみたいけど、怖くて聞けない。


だけど、あれは凄いタイミングだった。もし、あの時、夫が私に一歩先んじてくれなかったら、私は間違いなく、離婚を切り出していた。


そのあとで、夫があの言葉をくれたとしても、私は「何を今更」と素直に聞けなかったと思う。あの時の私は、夫から心が離れていたし、内藤さんに夢中になってたから。


その結果、たぶん離婚にまで突き進んでしまったんじゃないかと思う。


その後、私は幸せになれただろうか?なれたかもしれないし、なれなかったかもしれない。ただ、夫への後ろめたさを抱えて、生きて行くことになったのだろう。


でも、それは自業自得、私が選んだ道なのだから、仕方がない。だけど夫は・・・。


夫は私との離婚なんて、これっぽっちも望んではいなかった。なのに私に捨てられる形で、離婚になれば・・・。


やっぱり自業自得?違う、私のわがままで夫は不幸になるのだ。私が夫を不幸にするのだ。恐ろしい話だ、私は寸でのところで、不倫に輪をかけるような大罪を犯すところだったのだ。


だけど、もう迷わない。だいぶ家を空ける時間が、増えて来た息子達が、私達の元を巣立って行く日もそんなに遠い日のことではないだろう。


そうしたら、また夫婦2人の時間がやって来る。その時が来ても、私は夫と一緒に、夫に寄り添って生きて行く。


共に白髪が生えるまで。


って、既に、お互い少しずつ目立ち始めちゃって来てるけど、ね・・・。


END