「あの日の夕焼け」

第1章
ぼくと、君が出会ったのは雨の日だった。
あの日、ぼくはこの町に引っ越してきたばかりで
見知らぬ景色に怯えていた。
父と母に連れられ、ぼくは新しい家の隣に住む君の家を訪ねた。
ピンポーン...
聞きなれた音なのに、少しびっくりした。
「はーいっ!」
元気な声が返ってきた。
ガチャっ
「どちら...様?」
出てきたのは、パジャマ姿の君。
寝起きのようだった。
くるくるの髪の毛に、よだれのあと...
ぼくの最初の君への印象だった。
「ぷっ...笑笑」
笑いが込み上げてきた。
この町に来て初めて笑った。
君は呆けた顔で、こちらを見ていた。
「こんにちは、隣に越してきた松原(まつはら)といいます。」
母が挨拶した。ぼくは、父に背中を押された。
「あ、あの、ぼく、松原翔(しょう)って言います...よろしく...?」
あ、?をつけてしまった…
君は可笑しそうに笑いながら、
「こんにちは、私隣に住む櫻木日夏(にな)!
よろしくね、翔くん」
君の笑顔はまるで太陽だった。
いや、太陽なんて比じゃないくらいの眩しい笑顔だった。