没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます!

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「ったく、あんなにあからさまだとすぐにばれるぞ」

王都の中で最も貧しい第四区には、あまりにも不釣り合いな服装の青年ーーーレイは隣を歩く少年に声をかけた。

「・・・きっともう、ばれています。あの人は・・・シエルさんは何でもお見通しです」

「何でもお見通しな訳ないだろ。全知全能じゃないんだから」

「言葉の綾ですよ。でも本当に、僕の正体は気づいていると思います。気づいた上で何も言わない」

(シエルさんは優しいから、僕が自分から明かすのを待ってくれているんだ。なのに、僕はまだーーー)

レイに言葉を返しながら少年は唇を強く噛んだ。


自分よりも身長の低い少年を見下ろしながらレイはそっとつぶやいた。

「おまえが懐いているあの女、正体に気づきながらも関わっているのならおまえを利用しようと考えているんじゃねえか?もしそうならおまえとは離さないと」


その言葉を聞いて少年は目を見開き、レイのことを見上げた。

「僕からシエルさんを奪うのですか?」

「別に今すぐおまえからとろうとは思ってねえ。ただまだ不明確なところが多いからもう少し関わろうと思っただけだ」

そう言われても少年はレイのことをにらみつけるだけだ。
その表情は大好きな母親や姉が奪われることがいやだというそれだった。


「まあ今度ゆっくり話そう。だから時間を作って城に帰ってこい、ラインハルト」

「・・・わかりました」

少年、もとい弟が頷いたのを認識するとレイは一人で第一区に帰って行った。




最後の会話は町の喧騒に紛れ、第三者の耳に入ることはなかったーーー