お偉い貴族さまの突撃訪問から数日がたった。

あれから貴族が来ることもなく、私は大変満足していた。
朝から晩まで診察をして、夜はお気に入りの医学書を読んで眠る。私の理想の毎日が続いていた。

もちろん休みは欲しいのだが、自らの手で誰かを救える。そのことに満足しているのでわがままはいえない。
それにここ、第四区は私しか医者がいないからなおさら。


「シエルさん、そろそろお昼ですけどどうしましょう。まだ昼食作れていないんですが・・・」

私の唯一であり、大変優秀な弟子が困りましたという気持ちを前面にだした顔でやってきた。

本日は優秀な看護師、ノーラさんの欠勤でハルが看護師の代わりをしていたため、お昼ご飯まで誰も手が回らなかった。


「んー、しかたない。ちょっと市場で買ってきてくれる?何でもいいから」

「わかりました!」


いってきます!と元気に告げてハルは診療所を飛び出していった。

「ハル君は頼りになるねえ」

「ええ・・・最高の弟子です」


午前中最後の患者さんを診て、私は扉にかかっている札をOpenからCloseにかえた。
空を見上げると雲一つない快晴、布団干しには最適な日だ。

「んん・・・」

新鮮な空気を吸いながらのびをするのは最高に気持ちがいい。
こうも天気がよいとみんなで出掛けたくなる。・・・まあ無理な話だが。


これを平和と言わずになんというというくらいにのどかな第四区の景色に、心が満たされる。
私は第四区で育ってきたわけじゃないけれど、この地区を守りたい。


そろそろ中に戻ろうとドアに手をかけたとき、後ろから気配を感じた。

「おい・・・」

その人物から声をかけられ、仕方なく振り返る。

「え"・・・」


私の後ろに立っていたのはーーー

「今日はちゃんと診察してほしくて来た。診てくれないだろうか」


柔らかな薄茶色の髪を持った蒼い目の青年。そう、あの偉そうな貴族たちのうちの一人だったのだ。