「シエル先生、来ても大丈夫だったかい?なにか取り込み中だったんじゃあ・・・」

患者としてきた近所のおばあさんが恐る恐る聞いてきた。

「ええ、もう用事は終わりました。ですから大丈夫ですよ」


向こうからすればまだ用事は終わっていないし、もう一度ここに来るかもしれないけれど私としては話すことなんて何もないし、もう二度と来て欲しくない。


「よし、いい感じで回復してきています。おそらくあと1週間くらいでよくなります」

「それはよかった。ありがとうねえ」

「いえいえ、飲み薬だけ処方しておきますねー」


おばあさんが帰ったあとも、患者さんが何人も来た。
けれど今日はみんな軽い捻挫や風邪ばかりで、重病者は一人もいなかった。
患者さんがいなければ医者は稼ぐことができないので困るけれど、やっぱりみんなが健康な方がいい。



夜になり、10時になった頃ようやく本日の診察が終了した。

「今日の診察はこれで終わりね。お疲れ様、シエルちゃん」

今日診察をした人たちのカルテを整理していると、ノーラさんがお茶を持ってきてくれた。

「ありがとうございます。・・・これはハーブティー?」

「ええ。最近私とハル君ハーブティーにはまっているの」


ねー?とノーラさんがいうと、うなずきながらハルがやってきた。

「今日は・・・お疲れさまでしたシエルさん」

「いや、こちらこそ二人を巻き込んでごめん。結局あの二人がどこの誰だかわからなかったけれどあの二人の目的は私だったわけだし」

「いえ、僕の方こそごめんなさい・・・」

無関係のハルがひどく傷ついた顔で謝ってきた。


「何言ってんの、ハルが謝ることなんて何も・・・」

「あ、いえ・・・僕、男なのに二人を守ることもできなくて・・・」

「別に強盗とかに襲われたわけじゃないし、気にしなくていい。それにね、ここは私の診療所。ここでは決して誰もけがさせない。私が守る」


「もう!シエルちゃんかっこよすぎるわ!!でもシエルちゃんも女の子なんだから。万が一強盗が入ってきたらかないっこないわ。そこはハル君に任せましょ?」

「そう、ですね」

苦笑いをこぼしつつ、ノーラさんにうなずいておいたけれど私はそんなに弱くない。