***

八時に終わることはできなかったが、八時半には診療所を閉めることができた。
今から行けば九時前には着く。九時ならまだコーネリアたちは帰っていないかもしれない。


「少しゆっくり歩こうかな」

どうせ実家に早く着いてもやることはないのだ。基本的に診療所の二階で寝泊まりしているので、医学の本なども屋敷にはない。



第四地区のここから東に歩けば、実家のある第三地区につくが、わざと遠回りして第二地区、第一地区を通って帰ることにした。遠回りして着く頃にはコーネリアたちも帰っているはずだ。

(やっぱり第一地区と第二地区は栄えている。しかし王都でこんなに格差があるなんて王都の外はどうなっているんだろう・・・)


いつもはこの時間でも人通りが多いが、今日はほぼすべての貴族が王宮にいるからか人通りもまばらだ。


コーネリアの社交界デビューは成功しただろうか。もう少しで着飾ったコーネリアを見ることができる。楽しみだ。
姉として、妹の成長はとても嬉しい。

しかし同時にさみしくもある。今日を皮切りにコーネリアはほかの貴族との交流が増えるだろうし、そうすれば没落貴族というハンデがあっても、コーネリアを受け入れてくれる人に出会うだろう。そしてその人と幸せになるのだ。


(多くは望まない。ただ幸せになって欲しい)


そんなことを考えながら、実家への帰路に就くのだった。