今でこそ日々の忙しさから、髪も手入れがされず、肌の状態も良いとは言えないが、オーガストに弟子入りする前は本当にお人形かと思うくらいに可愛らしい姉だった。


(ううん、今はそれよりも自分の社交界デビューに集中しないと)

姉が出ないのならなおさら、しっかりと振る舞わなければならない。


が、そこでひとつの疑問が生じた。

(シエルお姉様は社交界での振る舞いを知っておられるのかしら?)


10歳で弟子入りしたシエルには貴族の娘としての教育はほとんど施されていないはずだ。
食事のマナーは幼い頃からしつけられているから知っているだろうが、もしかすると姉はダンスが踊れないのではないか。

器用で賢い姉にいつも負けているコーネリアの中で、やっと姉に勝てるものを見つけたという喜びが芽生える。

(ダンスができなくてむくれるシエルお姉様を見てみたいわ)

負けず嫌いな性格の姉だ。きっと悔しがるだろう。むくれる顔もきっと可愛い。
そんな姉を見てみたい。


(そうだ、私が社交界デビューした日に屋敷に来てもらおう。そして一曲踊ってもらうんだ)

男役は自分が少し練習して、姉には女役をしてもらえばいい。


「クスッ、楽しみだなあ」


一つの楽しみを見つけたコーネリアは満たされた気持ちで眠りについたのだった。