カーテンの隙間から差し込む暖かくて柔らかな日差し。スズメの声に目を覚ました。

(もう11時か…)

11時ほど嫌いな時間はない。なぜなら朝ごはんを食べるべきかお昼ご飯を食べるべきか、しょうもないけど意外と大事だったりする問題にいつも悩まされるから。

―新井彩月(あらい さつき)―
大きく雑誌の表紙を飾るそのモデルは紛れもない私自身だ。今日は今月初めての休日で月曜日の朝からゆったりと過ごしている。

「新井流!!今期一番可愛いトップス」
「彩月のオススメ!ヘルシーランチベスト10」
目を引くような大きなフレーズがずらりと並んだ雑誌やテレビの中での私は今とは違いすぎるキラキラ女子だ。

正直、服に対して特にこだわりもないしコーディネーターさんが選んでくれた服を着て、メイクさんに綺麗に顔を整えてもらい、ヘアメイクさんの慣れた手つきで早々とセットされる髪で毎日撮影している。

きっと誰もこの表紙のモデルがこんなにもだらしない朝を迎えているなんて思ってもいないだろう。今頃オシャレなカフェでコーヒーとかオシャレなランチでも食べてると思っているに違いない。

゛偽りの私゛にみんなが騙されて憧れを抱いている。

「SNSようにご飯食べに行こう。」

きずけばご飯も食べたいものよりSNS映えするものを選ぶようになっていた。モデルとしてあるべき姿を求めていつしか私自身の考えよりもみんなのイメージ、幻想に寄せている自分がいた。