そんなある日の夜のことだった。


めずらしい人から着信があった。


戸惑いつつ、通話ボタンをタップすると。


『菜穂……?』


少し高めの澄んだ声が、私の耳に触れた。


「梨華……」


そう……。


電話の相手は、梨華だった。


「久しぶりだね」


『うん。ほんと、久しぶり……』


梨華とこうして話すのも、もう2ヶ月ぶりくらいになるのかな。


「元気にしてた?」


『うん、まぁ』


「例の人とは? まだ続いてるの……?」


私に連絡して来たってことは、もしかして……。


『うん、続いてる』


そう言われて、一瞬言葉に詰まってしまった。


そっか……。


まだ続いているんだ。


それなのに、どうして私に電話して来たんだろう。


「何か用事だった?」


『ううん、別に。久しぶりに、菜穂の声が聞きたくなっただけ』


「そうなんだ……」


『だって、菜穂って大学の頃からお姉ちゃんみたいで。

優しいし、頼りになるし、菜穂と一緒にいるとホッとしてたからさ。

だから、しばらく会ってないと、菜穂が恋しくなるのよ。

思い切って電話して良かった。

こうして菜穂の声を聞いてると、やっぱりなんだかホッとする』


「梨華……」