「さっき、説明がつかないって言ったけど。

秀哉はそういう雰囲気にさえなれば、誰とでもキス出来るの?

たとえば、郁未とか」


私にこんな質問をされて、さすがに戸惑っている様子の秀哉。


私はそんな秀哉の顔を、じっと見ていた。


「俺……、誰とでもキスはしないよ。

もちろん郁未ともしない」


「そんな雰囲気になっても?」


「アイツとは、まずそんな雰囲気にならないよ」


秀哉は呆れたように、ハッと息を短く吐いた。


「だから例えばの話だよ。隣で寝てたりしても、そうならない自信ある?」


「絶対ならない」


秀哉は即答だった。


「じゃあ、ものすごくスタイルの良い美女にキスをせがまれたら?」


「だから、しないって」


「じゃあ、どうして……」


どうして私とは2回もキスしたの?


秀哉がそんなことをするから、私はいつまで経っても可能性を捨てきれないでいるのに。


「秀哉は、梨華が好きなんだよね……?」


私にそう聞かれて、一瞬悲しそうな瞳をする秀哉。


私をしばらくじっと見た後。


彼はゆっくりと頷いた。