あの日、秀哉とキスをしたこと。


それについて、秀哉と話したことは一度もなかった。


その意味について、尋ねたこともなかった。


昼間海で遊んでいる時、梨華の姿を目で追っている秀哉を何度も見たし。


バーベキューの時も花火の時も、梨華の隣には秀哉がいた。


その姿を見るたびに、私は胸がチクチクと痛くて。


だからこのキスが、何か意味のあるものじゃないのはわかっていた。


ものすごく眠かったし、もしかしたら夢だったのかもしれない。


そう思おうとしていた時期さえあるのに、まさか同じことが二度あるなんて……。


さすがに、その意味が知りたくなる……。


「うん……。前にもあったよな……」


そう言われて、胸がトクンと音を立てた。


「私……、秀哉は忘れてると思ってた」


「覚えてるよ。ちゃんと覚えてる」


覚えていたのに、そのことについて何も言わなかったのはどうしてなんだろう。


秀哉はあのキスの後、まるで何もなかったかのように普通に接していた。


相変わらず、梨華のことが好きで……。


私とは、仲の良い友人だった。


あの時、私が何か言っていたら。


私達の仲に、何か変化はあったの……?