「菜穂……」
せつなそうに私を呼ぶ秀哉。
あまりに苦しそうだから、思わず秀哉のサイドの髪に触れた。
そうしたら秀哉が、目をきゅっと細めた。
「あのさ……」
今まで、こんなに近くで秀哉の顔を見たことがあったかな。
こんなふうに、秀哉の髪に触れたことなんてあったかな。
「ごめん、俺……。
多分、今からすげー勝手なこと言うと思うけど……」
「な、何……?」
さっきからずっと私から視線を逸らさない秀哉。
しばらく見つめ合っていると、彼の髪に触れている私の手に秀哉がそっと自分の手を重ねて。
その感触に、トクンと心臓が鳴った。
「嫌だ……」
「え……?」
「嫌なんだ……」
「な、何が……?」
ゴクンと息を飲むと、秀哉が震えるような声で言った。
「俺……。
崎田君に……。
菜穂を渡したくない……」
思わず目を大きく見開いた。
そのまま、二人とも微動だに動けなかった。
少し潤んだ秀哉の瞳。
私の手に重ねた秀哉の手が、私の手をぎゅっと握った次の瞬間。
まるで磁石で引き寄せられるように、唇同士が近づいて。
二人でほぼ同時に瞼を閉じると。
お互いの唇を、静かに重ね合わせた。
せつなそうに私を呼ぶ秀哉。
あまりに苦しそうだから、思わず秀哉のサイドの髪に触れた。
そうしたら秀哉が、目をきゅっと細めた。
「あのさ……」
今まで、こんなに近くで秀哉の顔を見たことがあったかな。
こんなふうに、秀哉の髪に触れたことなんてあったかな。
「ごめん、俺……。
多分、今からすげー勝手なこと言うと思うけど……」
「な、何……?」
さっきからずっと私から視線を逸らさない秀哉。
しばらく見つめ合っていると、彼の髪に触れている私の手に秀哉がそっと自分の手を重ねて。
その感触に、トクンと心臓が鳴った。
「嫌だ……」
「え……?」
「嫌なんだ……」
「な、何が……?」
ゴクンと息を飲むと、秀哉が震えるような声で言った。
「俺……。
崎田君に……。
菜穂を渡したくない……」
思わず目を大きく見開いた。
そのまま、二人とも微動だに動けなかった。
少し潤んだ秀哉の瞳。
私の手に重ねた秀哉の手が、私の手をぎゅっと握った次の瞬間。
まるで磁石で引き寄せられるように、唇同士が近づいて。
二人でほぼ同時に瞼を閉じると。
お互いの唇を、静かに重ね合わせた。



