ただ触れ合っているだけの唇。
どれくらい重なっていたのか。
その時間の感覚は、全くわからない。
ただ、わかるのは。
唇が離れた今も、彼の顔が至近距離にあるということだけ。
「目くらい、閉じてくれませんか……」
まだ唇が触れ合いそうな距離で崎田君が言った。
「あぁ、そうか。
菜穂さん、初めてだもんね。
キスの仕方も知らないか」
嘲笑う彼に、フッと鼻から息を吐いた。
「悪いけど……」
床に落ちたコンビニの袋を拾い上げると、私はゆっくりと歩いてパイプ椅子に静かに腰を下ろした。
「キスは、崎田君が初めてじゃない……」
そう言ったら、崎田君の可愛い顔がくしゃっと歪んだ。
「誰とも付き合った事がないのに?」
崎田君の問いに、こくんと頷いた。
「もしかして……。
今の僕がしたみたいに、一方的にされたんですか?」
「ううん、同意の上だったよ……」
そう答えると、崎田君は深いため息をついた。
「菜穂さんって、やっぱり思っていた通り手強い人ですね……。
まぁ僕は、逆に燃えるからいいけど」
聞けば、今日私達の住む地域が梅雨入りしたらしい。
どうりでジメジメとしているわけだ。
ひんやりと氷のように冷たい崎田君の唇。
その感触が、梅雨の湿度と共にしばらく離れてくれなかった。
どれくらい重なっていたのか。
その時間の感覚は、全くわからない。
ただ、わかるのは。
唇が離れた今も、彼の顔が至近距離にあるということだけ。
「目くらい、閉じてくれませんか……」
まだ唇が触れ合いそうな距離で崎田君が言った。
「あぁ、そうか。
菜穂さん、初めてだもんね。
キスの仕方も知らないか」
嘲笑う彼に、フッと鼻から息を吐いた。
「悪いけど……」
床に落ちたコンビニの袋を拾い上げると、私はゆっくりと歩いてパイプ椅子に静かに腰を下ろした。
「キスは、崎田君が初めてじゃない……」
そう言ったら、崎田君の可愛い顔がくしゃっと歪んだ。
「誰とも付き合った事がないのに?」
崎田君の問いに、こくんと頷いた。
「もしかして……。
今の僕がしたみたいに、一方的にされたんですか?」
「ううん、同意の上だったよ……」
そう答えると、崎田君は深いため息をついた。
「菜穂さんって、やっぱり思っていた通り手強い人ですね……。
まぁ僕は、逆に燃えるからいいけど」
聞けば、今日私達の住む地域が梅雨入りしたらしい。
どうりでジメジメとしているわけだ。
ひんやりと氷のように冷たい崎田君の唇。
その感触が、梅雨の湿度と共にしばらく離れてくれなかった。