「秀哉……」


そう。


病室に入って来たのは、スーツ姿の秀哉だった。


そんな秀哉の手には買い物袋が。


おそらく梨華に頼まれたものを、仕事の途中で買って持って来たのだろう。


「菜穂、どうしてここに?」


そう言って秀哉が、私のところに近づいていた。


秀哉が驚くのも無理はない。


私がここへ来ることを、秀哉には全く話していなかったのだから。


「っていうか菜穂、目が真っ赤じゃないか。

泣いてるの?」


秀哉にそう言われて、ゆっくりと身体を起こすと。


「私だけじゃないよ」と、梨華の方を指差した。


「えっ、梨華も泣いてるのか?


どうしたんだよ、二人して」


秀哉の問いに、顔を見合わせる私と梨華。


思わずプッと笑って、一斉に秀哉の方を見た。


「秀哉、もういいよ……」


梨華が言った。


「菜穂にね、きつーくお説教されちゃった。

それでもう目が覚めたの。

私、実家に帰ることにしたわ。

両親に正直に話して、そこで赤ちゃんを産んで育てる。

だから秀哉はもう、菜穂の元へ行ってもいいんだよ……」


「梨華……」