「ごめんね、菜穂」


梨華が急に真剣な顔で言った。


「菜穂はずっと秀哉が好きだったのに。

それから秀哉も、菜穂が好きだって言ってるのに。

二人の仲を裂こうとして……。

二人ともすごく優しいから、つい甘えてしまったのかもしれない。

でも、もうやめるね。

秀哉にふさわしいのは、間違いなく菜穂だと思うから」


うそ……。


本当に……?


「じゃあ、もう……」


私の問いに、ゆっくりと頷く梨華。


「うん……。

もう秀哉に責任を押し付けたり、縛り付けたりしない。

だから菜穂、秀哉と幸せになって……」


梨華にそう言われた途端、今まで我慢していた思いが、堰を切ったように溢れ始めた。


「やだ、菜穂。そんなに泣かないで」


「だって……」


だって、もう止まらない。


ようやく……。


ようやく秀哉と、本当の意味で恋人同士になれるんだもの。


「ごめん、菜穂。本当にごめん」


ベッドに顔を伏せる私の頭をヨシヨシと撫でる梨華。


私はそのまましばらく泣いていた。


するとガラッと、病室のドアが開いて。


誰だろうと振り返ると。


思いがけない人が立っていた。