「そう言われてみたら、そうかもしれない。

私、ずっと我慢してた。

お父さんに叱られるのが怖くて……。

わがままなんて言ったら、それこそもっと叱られてしまうし。

だから……。

親に本音を言うことを、すっかり諦めてしまった気がする……」


やっぱり、そうか。


梨華の恋愛のトラブルの原因は、父親との関係が良くなかったところにあるんだ。


「この機会に、ご両親にちゃんと伝えた方がいいよ。

本当は、そんなに叱らないで欲しかった。

本当は、もっと優しくして欲しかった。

本当は、もっと愛して欲しかったって……」


私がそう言うと、再び梨華の目に涙がいっぱい溜まってしまった。


「なんでだろう。

なんか、すごく泣けてくる。

私、傷ついてたのかなあ。

本当は私、もっとお父さんに優しくして欲しかったのかなあ」


「そうだよ。きっとそう」


だからいつも心のどこかで、無条件に愛してくれる人を探してしまう。


梨華がなかなか恋を諦められないのも、もしかしたら父親からの愛を諦めていないからなのかもしれない。


「菜穂ってすごいね。

どうしてそんなことがわかってしまうんだろう」


「うーん、どうしてかな。

長年の付き合いだからじゃない?」


そう言うと、梨華がきゅっと目を細めた。