「菜穂……」
私の隣に腰を下ろしている秀哉が、私の顔を見ながらせつなそうに私の名前を呼んだ。
その顔には疲れが見えていた。
きっとここへ来るまで、色んなことがあったんだろう。
さらには梨華のお腹が急に痛み出して、どうしていいかわからずに、不安でいっぱいだったに違いない。
「菜穂の顔見たら、なんかホッとした……」
少しだけ笑顔を見せてくれる秀哉。
手を繋ごうとお互いに手を伸ばしたその時。
「すみません」と、後ろから声をかけられた。
ビクッとして振り返ると、そこには事務員さんらしき女性が立っていた。
「吉見さんの婚約者の方ですよね?」
そう聞かれて、私も秀哉も一瞬で固まってしまった。
「入院のしおりをお持ちしました。必要なものもこちらに書かれているのでご用意ください。
あと、この入院申込書ですが、こちらはお早めにご提出ください。
身元引受人の欄には、婚約者様のお名前をご記入ください」
「あの、俺は……」
“婚約者じゃありません”
そう言いたそうな秀哉だったけど。
事務の人が間髪を入れずに淡々と説明を続けるから。
とてもじゃないけど、そんなことは言えそうになかった。
私の隣に腰を下ろしている秀哉が、私の顔を見ながらせつなそうに私の名前を呼んだ。
その顔には疲れが見えていた。
きっとここへ来るまで、色んなことがあったんだろう。
さらには梨華のお腹が急に痛み出して、どうしていいかわからずに、不安でいっぱいだったに違いない。
「菜穂の顔見たら、なんかホッとした……」
少しだけ笑顔を見せてくれる秀哉。
手を繋ごうとお互いに手を伸ばしたその時。
「すみません」と、後ろから声をかけられた。
ビクッとして振り返ると、そこには事務員さんらしき女性が立っていた。
「吉見さんの婚約者の方ですよね?」
そう聞かれて、私も秀哉も一瞬で固まってしまった。
「入院のしおりをお持ちしました。必要なものもこちらに書かれているのでご用意ください。
あと、この入院申込書ですが、こちらはお早めにご提出ください。
身元引受人の欄には、婚約者様のお名前をご記入ください」
「あの、俺は……」
“婚約者じゃありません”
そう言いたそうな秀哉だったけど。
事務の人が間髪を入れずに淡々と説明を続けるから。
とてもじゃないけど、そんなことは言えそうになかった。