俺のワケのわからない回答に、梨華は首を傾げるばかり。


「俺、多分……。

もう随分前からその人が好きだったんだと思う。

その人と一緒にいることが、あまりに自然過ぎて気づいていなかったんだ。

だけど、梨華と付き合うことになって、その人に会えなくなると。

俺……、その人のことばかり考えてて……。

会いたくて、話したくてたまらなかった。

昨日どうしても会いたくなって、その人に会いに行ったんだ。

そうしたら、やっとわかったんだ。

俺は、恋愛感情でこの人が好きなんだって……」


大学2年の夏、菜穂とキスをしたのも。


俺の部屋でキスをしたのも。


好きだったからしたんだ。


身体は正直に菜穂を求めていたのに。


頭はそのことに、全然気づいていなかったんだ……。


「一緒にいることが自然過ぎたって。

付き合いの長い人なの……?」


梨華の問いに、俺はゆっくりと頷いた。


「長いし、頻繁に会ってたよ……」


大学では、休日を除くほぼ毎日。


卒業してからも、毎週のように会っていた。


「だけど、私と付き合うことになったから、会えなくなった……?」


そう言った後、梨華がハッとしたように顔を上げた。


「ね、ねぇ……。

まさかその女の人って……」


梨華は、もうわかっているようだった。


本当に、そういう勘だけは凄まじい。


「そう……。


俺が会いに行った人は……。


菜穂だよ……」