「答えは、簡単だったよ。


それはもう疑いようもないくらい」


秀哉の声が、まるで歌のメロディみたいに。


私の心に美しい旋律を奏でる。


「俺が好きなのは……。


キスしたい相手は、菜穂なんだって……」


そう言うと、秀哉はせつなそうに目を細めた。


「ごめんね、菜穂。

ずっと俺のことを想ってくれてたのに。

いつも、いっぱい優しさをくれたのに。

俺、鈍くて……。

全然、自分の気持ちに気づいてなくて……」


「秀哉……」


「どうしよう、俺……。

やっとわかったのに。

やっと菜穂が好きってわかったのに。

他の人にプロポーズなんかして……。

菜穂の気持ちも、俺から離れて。

俺、どうしてこんなにバカなんだろう……っ」


そう言った後、秀哉から大粒の涙がこぼれた。


そんな秀哉を見ていたら、たまらなくなって。


私は秀哉を、ぎゅっと抱きしめた。


秀哉は私の腕の中で震えていて。


声を殺して泣いていた。