「ごめん、梨華。俺、ちょっと出かけて来る!」


そう言うと俺は、梨華の手を自分から離して急いで玄関へと向かった。


「出かけて来るって、どこへ行くの?」


慌てて追いかけてくる梨華。


そして、靴を履いている俺の腕をグイッと引いた。


「どこに行くの? なんで急に?

嫌よ!

ちゃんと説明してくれないと、この手を絶対に離さないから」


「頼む、梨華。行かせてくれ。

すごく大事な用事なんだ」


今行かないと、絶対に後悔する……!


「大事って、何?

私より大切なものがあるって言うの?」


大切なもの……?


それを思い浮かべたら、胸の奥がギュッと締め付けられた。


「もしかしたら、そうかもしれない。

だから……。

それを確かめに行きたいんだ」


「は?」


首を傾げる梨華。


「梨華、今夜はここに泊まってもいいし、自分の部屋に帰ってもいい。

好きにしていいから」


「秀哉?」


「本当にごめん……!」


そう言うと俺は、梨華の手を離して玄関を飛び出した。


そしてアパートを出ると、猛スピードで走り始めた。