「奈々ちゃん、一緒に校門まで行こう!」

「あ、それじゃ俺も仲間に入れてよ。それに、仁奈の家と俺のバイト先同じ方向だしさ。」

「じゃー、三人で行こうか。」


廊下に出ると他のクラスの子もどんどん出てくる。
すると、仁奈ちゃんがなぜか小声で話し出す。


「あの子だよ。代表挨拶してたの。」

「なんで小声なの?」

「普通の声だと特進科の子たちに睨まれるから。」

「わ、わかった。それで、えっと、あの子?」


私は指をさす。その瞬間視線が私にそそがれた。
指をさすことが失礼なのはわかっていたが、ここまでなるとは思ってもいなかった。


「えっと…すいませんでしたー!!」


そう叫んで私は早足で階段に向かい、駆け下りた。
その時一瞬だけ、仁奈ちゃんが教えてくれた子と目が合った気がした。


「奈々ちゃん、さっきのはやばかったね!橘くんもそう思うよね…ってあれ!?いない!?」

「あー、橘くんなら、呑気に歩いてるんじゃない?さすがに特進科の子たちも、橘くんには頭上がらないって。」

「そうそう。俺が唯一、特進科と普通科の橋渡し役ってわけ。」


そう言って一瞬のすきに現れた橘くんに、仁奈ちゃんは驚きつつ笑いながら言う。


「その手があったのか!よろしくね、橘くん!」


私も橘くんも、そんな仁奈ちゃんにつられて笑った。
楽しいスタートでよかった。