「すごい大きな花束だね」
「光……あたしの誕生日覚えていたんだね……」
「忘れるわけないさ。夕陽の誕生日だろ…」
王子様みたいな身なりに、まるでお伽話から出てくる王子様のような言葉をくれる光が大好きだった。
わたしの喜ぶ言葉を選んでくれる、でも光はいつだって意識してそれをしていたのかもしれない。今になって思うのは、光は完璧な人間じゃないし、お伽話に出てくるような王子様でもないんだ。
だってわたしは、光の弱いところだって沢山知ってしまったから。弱いところも強いところもあって、光りでも影でもあるのが、人間なのだから。
「ありがとう…。どうしてこんなところにいるの?仕事は?」
片方の眉毛を下げて、また困ったように笑わせてしまった。
「どうしても誕生日おめでとうって言いたくて…。
でも夕陽、俺の連絡返してくれないだろうし、待ち伏せって言ったらなんかストーカーみたくなっちゃうけど……」
そして苦笑した。
光にこんな顔をさせたいわけじゃないのに、掛ける言葉を何度も探したけれど、どうしても見つからなくて。
「ごめん……連絡返せなくて…」
「いいって。会いに来ようと思えばいつだって会いに来れた。
夕陽がTHREEから双葉に移籍したのも風の噂で聞いてたんだ。知ってたから…。知ってても会いにくる勇気わかなかった。俺って案外ヘタレだよな?」



