いつだって笑っていた。柔らかく優しく、それは包み込むように。その笑顔を、誰にでも公平な優しさを煩わしく感じた日だってあった。いつだってその優しさや笑顔を独占したかったのだから。
けれどいつからだろう。あなたの笑顔の奥の奥に、わたしには絶対に見せないような悲しみがあって、その笑顔を独占したいと思う反面誰にも見せな悲しみや、傷ついた感情をわたしにだけ見せて欲しいと思うようになった。
わたしは初めて恋をした、あなたの全てが欲しくて、全てを知りたくて、だって何も知らなかったわたしに、こんな感じた事のない感情を教えてくれた初めての人だったから。
わたしの中の彼は、優しくて強い。いつだって正しかった。そしてわたしが思っていた以上に儚くて脆かった。
あの頃はいつだってわたしの前で余裕の表情を見せた彼が、今は迷っている。
「光………」
久しぶりに見た光は、わたしが思っている以上に弱々しく映って見えた。
躊躇いなくわたしに駆け寄ってきて、わたしの頭を撫でた、あの頃の光は今はいない。
「夕陽……誕生日おめでとう。
髪、ばっさり切ったんだな…。夕陽は美人だから短い髪もよく似合うよ」
それでもこの夜の世界で、わたしを夕陽と呼ぶのは、光ただひとり。
その懐かしい名前に、心がきゅっとする。
止めていた足を前に出して、一歩一歩わたしへと近づく。光を見上げるわたしに、困ったような微笑みを落とす。
わたしがいつも気づいていなかっただけだろうか。光はいつも何か言いたげに、困ったような笑顔を見せていたんだ。
涙が出そうになる。光が体をかがめて、わたしへ視線を合わせると、少し長い茶色の髪が揺れて、懐かしい香りが鼻先を掠める。
けれどいつからだろう。あなたの笑顔の奥の奥に、わたしには絶対に見せないような悲しみがあって、その笑顔を独占したいと思う反面誰にも見せな悲しみや、傷ついた感情をわたしにだけ見せて欲しいと思うようになった。
わたしは初めて恋をした、あなたの全てが欲しくて、全てを知りたくて、だって何も知らなかったわたしに、こんな感じた事のない感情を教えてくれた初めての人だったから。
わたしの中の彼は、優しくて強い。いつだって正しかった。そしてわたしが思っていた以上に儚くて脆かった。
あの頃はいつだってわたしの前で余裕の表情を見せた彼が、今は迷っている。
「光………」
久しぶりに見た光は、わたしが思っている以上に弱々しく映って見えた。
躊躇いなくわたしに駆け寄ってきて、わたしの頭を撫でた、あの頃の光は今はいない。
「夕陽……誕生日おめでとう。
髪、ばっさり切ったんだな…。夕陽は美人だから短い髪もよく似合うよ」
それでもこの夜の世界で、わたしを夕陽と呼ぶのは、光ただひとり。
その懐かしい名前に、心がきゅっとする。
止めていた足を前に出して、一歩一歩わたしへと近づく。光を見上げるわたしに、困ったような微笑みを落とす。
わたしがいつも気づいていなかっただけだろうか。光はいつも何か言いたげに、困ったような笑顔を見せていたんだ。
涙が出そうになる。光が体をかがめて、わたしへ視線を合わせると、少し長い茶色の髪が揺れて、懐かしい香りが鼻先を掠める。



