「え?!」
「お誕生日のキャストにプレゼントは必ず渡しているんです。
さくらさん今日は本当にお疲れ様でした」
中からはピンク色のストールが出てきた。
「なんか…逆に申し訳ないです…ほんと…
でもありがとうございます」
「いえいえ、やっぱりさくらさんはピンクも似合いますね。今日の白いドレスもとても似合ってましたけど。
あなたはとても淡い色が似合う」
そう言って、沢村は優しく微笑んだ。
由真にもお礼を言おうと思ったけれど、こうなってしまっては中々起きないと沢村が言って、わたしは去年同様、あの薔薇を両手に持ってお店を出た。
両手いっぱいに抱えきれないほどのレインボーローズ。
花言葉は、無限の可能性。奇跡。去年、ブルーローズを抱えてひとり歩いていた時、朝日はわたしを待っていてくれた。
いつだって朝日は自分勝手なわたしを待ってくれていた。その想いに応える事が出来なくて、自らの手で壊した。大切な物だけを大切にするには、抱えきれない物が多すぎて。
だからお店を出て、花束の先に見つけた人に、体が硬直して動けなくなった。
派手な花束を持っているわたしを、道行く人は誰もが振り向いた。
それでもその足を止める事はなくて
わたしと彼だけが時間を止めたようにその場に立ち尽くしていた。



