【完】さつきあめ〜2nd〜


それだけ言い残して、風のように去っていってしまう。
余りに突然の出来事に、お礼さえ言い忘れてしまった。
手の中に残されたのは、とあるブランドの包装がされた箱だけだった。

中を開けたら、ブランドに疎いわたしでも知っている有名ブランドのモノグラム柄が見えた。

「あぁ、新作ですね。中がピンク色になってて今人気なんですよね。さくらだから、ピンクにしたのかな?」

わたしの手の中を覗いて、沢村が感心したように言う。

「これってめっちゃ高いですよね…?」

「えぇ、レイさん奮発しましたね」

「なんか申し訳ないな…。てゆーかあたしお礼言い忘れたし!!」

思い出して、後悔。
項垂れるわたしの背中を沢村が軽く叩いた。

「さくらさんは本当にブランド物に興味がないですよね。
この仕事をしてる女の子はやれ鞄だ財布だって皆大抵高級ブランドを持ちたがるものなんですけどね」

「あぁ…あんまり興味がなくて…。ていうか必要最低限の物があればいいっていう考えなので。
でもこのお財布すっごく可愛いですね!」

「えぇ、とてもさくらさんに似合っています。
後、これは僕と由真ママからです。いやー、なんかレイさんに先を越された感があるんですけど…」

そう言って、沢村はさっきレイがくれた財布と同じブランドの包みを渡した。