「だからあれはー…装飾されたレインボーローズですって!」
「その人の心が本物ならば、まがい物だって本物になるんじゃないかな」
小笠原は柔らかく微笑む。
そしてグラスにゆっくりと口をつける。
わたしも真似して、小笠原のいれてくれたブランデーのボトルに口をつけた。
苦みが口いっぱいに広がっていったけど、それは不思議と不快感はなかった。
「ロマンチストついでにローザ・ヴァンデラの花言葉を教えてあげよう」
ふとした言葉に、いつだって過去は思い返される。
1年前の今日も、自信満々に言っていた。ブルーローズの花言葉を。
’さくらは青い薔薇の花ことばって知ってる?’
得意になってこちらへ向ける顔を
’青い薔薇の花ことばは、‘不可能’。’
不敵に浮かべる笑みを
’青い薔薇は元々生み出す事は難しいって言われていたんだ。
だから花ことばも不可能だったんだって。
でも14年かけて青い薔薇を生み出す事に成功したんだ。
それから、青い薔薇にはもうひとつ花ことばが加えられた’
夢かなう、と言ったあの言葉の優しさを、目を閉じればいつだって思い出せる。何度だって何度だってわたしは思い出すことが出来るんだ。
けれど叶えられない夢も沢山ある事は知っていた。



