「へっへっー、本当にナンパかと思ってやんの!」

「うるさいなぁ!何声変えてんのよ!!」

「雨の中、ボケーっと空を見上げてる良い女がいるなぁと思ってなぁ。
口空けて上を見てる姿はアホっぽかったけどな」

「最初見た時は誰か分からなかったぁ~…
てっきり生活に疲れ果てたサラリーマンのおじさんかと思ってしまいましたよぉ~…
まさか宮沢朝日さんだったとはぁ~!!
見るたびに地味になっていきますねぇ!!まぁ年相応でいいと思いますよぉ~!!」

朝日の嫌味に嫌味で返すと、眉をひそめながらやっぱり笑った。

「いつ会っても生意気な女ッ!」

「いや~久しぶりですねぇ~この間会ったの半年前くらいでしたっけ?」

「だからその喋り方やめろ。癇に障る」

「はいはい~、何?こんな時間まで仕事?
それともまた飲み歩いてんの?」

「別に…」

「別にってなんだよ!!」

「会社でデスクワークしてたら、ふと思い出して」

朝日が遠くを見つめている。
少し先のビルに、皐月と書かれた看板が大きくビルを彩っていて
雨に濡らされて、ネオンが煌びやかに光っている。

朝日は一歩前へやってきて、右手でわたしの前に薔薇の花を差し出した。