【完】さつきあめ〜2nd〜

「ねーねーおねぇさん、何してんの?」

ナンパや、スカウトなんてこの辺を歩いていればどこにでもいる。

「暇なのー?暇だったら飲みにいかないー?」

くるりと振り返って、満面の笑みで言ってやろう。
人と待ち合わせしてるんで、って。
空しくならないように、それはそれは満面の笑みで。

笑顔で振り返って、すぐに言葉を失ってしまった。

初めて彼を見た日は、なんて派手な人だろう、と思った。
あの頃は、アッシュ系の派手な髪色で、その長めの髪を綺麗にセットしていた。
鋭い瞳で、派手な服に身を包んで、高価なブランド物の装飾品を身に着けていた。

そして、全てを手に入れたような顔をして笑っていた。

けれど今、わたしの前に立っている男は、紺色のスーツとコートを身にまとって、透明のビニール傘を手にしている
どこにでもいるようなサラリーマン風の男。髪の毛だって黒色だし、けれどあの頃光とお揃いで着けていたダイヤモンドのついた腕時計はそのままで
そしてあの頃と変わらない顔をして、笑うんだ。