【完】さつきあめ〜2nd〜


携帯を閉じて、街を見渡す。
色とりどりの傘が広げられて、繁華街を歩く人々。
傘がぶつからないように避けながら歩く。
笑い合っている中にも、それぞれに事情を抱えて生きていく人。

再び携帯を開いて、耳に充てる。
2コールで出たその人は迷惑そうに「もしもし?」と不機嫌に言った。

「もしもしゆりさんー?!
いま何してるー?!あたし今日誕生日なんだけど…
寂しいのー!!!」

「あぁおめでとうございます。明日お客さんと顔出すから、じゃね」

「ちょっと酷ッ!めんどくさそうに切ろうとしないで下さいよ!!」

「んなの知るかっての!
雪菜にでも電話してみなさいよ!」

「だって…雪菜さんは新婚だから邪魔しちゃいけないし…
綾乃ちゃんは涼とラブラブだし
美優ちゃんは絶対に寝てるしさぁ…
そう考えたらこんな時間に起きてて、なおかつお祝いしてくれそうなのってゆりさんしかいないんだもん!!」

「はぁーーーーー?!あんたあたしを何だと思ってんの?!」

「だってゆりさん、あたしの事好きじゃないですか……。
それにゆりさんあたししか友達いないし!
あ!見ましたよ!雑誌のインタビュー!」

「チッ…。
てゆーか今彼氏と一緒にいるから今日は無理!
明日お店に行ってあげるから!」