【完】さつきあめ〜2nd〜


だから、雨は好きなんだ。

途切れながらも、何度も続いていく幸せのようで
灰色のコンクリートを真っ黒に染めていく様さえ
雨音の一定のリズムを刻む音も
そして、雨上がりの乾いた匂いさえも

あなたに出会えたからこそ、出会えた大切な人がいて、知らなかった幸せを知った。



携帯を開きながら、さっき着たメッセージの返信をする。

「ありがとう。また顔を出します。心配しないでね」

上手くいっていなくて、家出同然で飛び出してきた家。
母親の希望は何ひとつ聞き入れなかった。
利己的に見えたお母さん。でも少し大人になった今なら、母親の気持ちも理解出来るような気がして
わたしはいつだって愛されていたと思う。

まだまだ関係は全て良好と言ったわけではないけど、文月でママをやると決めた時に光はけじめだから、そう言って、わざわざわたしの両親に挨拶に行ってくれた。

男を連れて行く、と行ったらお母さんはわたしの話なんかロクに聞かずに「結婚か?!」とぎゃーぎゃー騒いだ。
水商売の男など母親の中では悪でしかなかったのかもしれないけれど、光の身なりがきちんとしている事としっかりとした説明の上で
認めはしなかったけれど、好きに生きなさいと言ってくれた。
少しだけ母親が小さく見えた日でもあった。

分かり合おうとしなかったのは、わたし自身だったか。