沢山の出会いの中で、今の自分が作られている。
そう思えば、傷ついたあの頃さえ愛しく思えてきて………。
「あたしは運命の人っていると思う!」
「運命の人?」
美月の言葉に、思わず笑いがこみあげる。
でも美月は真剣な顔をしていた。
「きっと人生って出会いと別れの連続なんだと思ってる。
沢山の人と出会ったって、大切な人とそうじゃない人と分かれていくように。
人間は生きている間に大切だと思える人間に出会える数はきっと限られてくるんですよ。
あたしにとって、さくらさんも…その大切な人のひとりです…」
ぎゅーっと力強く美月を抱きしめたくなった。
きっとそうだね。
わたしにとっても、美月は大切な人。でもこうなるなんて出会った当初は思いもしなかった。
出会った時は、好きではなかった。
けれど人とお出会いなんて案外重要ではなかったり
出会った後に一緒に過ごす時間の中で変わっていく関係があって
「ママーなんの話してるのー?」
「翔がママの運命の人って話だよ~!!」
ぎゅーっと翔を抱きしめる美月の顔は本当に幸せそう。
わたしもいつか出会えるのだろうか。 いや、それはもう出会っているのかもしれない。
ちょうど、お店の扉が開けられて
びっくりした翔は美月の後ろに隠れた。
誰か、確認した後に美月は笑いながら翔に「翔~!この間お菓子貰ったおじちゃんだよ~?忘れちゃった?」と言った。



